私が住む地域は周りを山に囲まれ、冬には4mもの積雪を誇る豪雪地帯です。
暮すには少々不便なこの地域であるからこそ美味しいお米が作れます。
本記事では、どのようにして「源四郎のお米」がつくられているのか解説します。
春:苗起こし〜田植え
「雪国峠米」の米作りは雪解け前から始まります。
春に行う工程は大きく分けて以下になります。
- 苗起こし
- 代かき(しろかき)
- 田植え
それぞれの工程について説明していきます。
苗おこし
苗おこしで行う最初の作業は、まだ解けきっていない雪をどかす作業から始まります。
この地域では、11月の後半から雪が降り始め、年末年始にかけて一気に積もります。
1月〜2月頃には4mを越す積雪になります。
3月頃より徐々に弱まり、春の訪れとなりますが、まだまだ雪は消えません。
苗は買わない
最近では、苗を買う農家さんもたくさんいます。
ですが、苗を買っても品質にバラつきがある、植えるのに適正なタイミングでないことがほとんど。
私は自分で自ら苗の生育を見極め、適切なタイミングで植えたい為、苗は買いません。
苗半作という言葉もある通り、この育苗の工程は地味ですが、後々にひびく重要な工程です。
代かき
代かきは言わば、田んぼの準備段階のようなもの。
準備をキッチリこなさないと後で大変な目に遭います。
代かきでは、田んぼに水を入れ土をトロトロの状態にした後行います。
代かきを行う理由としては、主に以下となります。
- 雑草の種を深く埋め込むことで、雑草の発生を減らす。
- 田んぼの水漏れを防ぐ。
- 土の表面を平らにして苗がムラなく育つようにする。
代かきの工程は、一回で終わることはほとんどなく、自分が納得するまで何回も行います。
田植え
育てた苗を代かきで平らになった田んぼに植えつけていきます。
植えつけ方についても農家により違いがでます。
疎植か密植か
- 疎植:均等にではなく、まばらに植える
- 密植:均等に隙間なく植える
「雪国峠米」は疎植での栽培を行っています。
疎植のメリットとしては主に以下となります。
- 日光が当たりやすく、風通しも良い為、力強く育つ
- 根の張りがよくなり、倒れにくくなる
- 病害虫にも強い稲ができる
疎植を行う農家さんは「味を重視」し、密植を行う農家さんは「収量」を重視しています。
夏:草刈り〜施肥
慌ただしい春が終わると比較的落ち着きます。
ですが夏の暑さとも相待ってキツい作業(ほとんど土方)が続くのもこの季節。
主な仕事は以下となります。
- 草刈り
- 水の管理
- 肥料を施す
夏の作業は山際の田んぼだからこそ「やらないといけない」仕事がたくさんあります。
草刈り
山際の田んぼの草刈り面積田んぼの面積より広いほど、広大な面積を刈る必要があります。
刈っても刈っても次の草が生えてくるので、ほぼ毎日が草刈りです。
年間に3〜4回は全面の草刈りを行います。雑草の生命力の強さにも圧倒されます。
草刈りを行う主な理由としては以下です。
- カメムシなど、稲に悪影響を及ぼす虫の防止
- 風通しが悪くなることによる、病気の防止
- 水や栄養を横取りされてしまう
- 周りに迷惑をかけない
地味だけど欠かせない農家の仕事です。
水の管理
田んぼの中にある水の深さは稲の成長段階に併せて変化させる必要があります。
もちろんここで使う水は常に、山から注がれる雪解けの清水です。
稲の成長段階による水の深さを例えるなら、
- 赤ちゃん:ゆりかごの中で守られている(深水)
- 成長期:成長が最も進む時期(中干し→浅水)
- 青年期:独り立ち(落水)
田んぼ毎に、稲の成長具合も異なります。
それぞれの時期に合わせた最も良い状態に保つために、日々の見回りは欠かせません。
肥料を施す
お米の美味しさを左右する、肥料をあげる工程(施肥という)
この工程は、農家さんにより大きく違いがでる部分です。
私の場合は、何年も農家をやられている方を参考にし、自分なりにアレンジを加えながら調整しています。
主に上げている肥料は以下のものを使用しています。
できるだけ自然由来のものを使うように心がけています。
- ミネラル分
- 有機肥料
豊作になるミネラル分
ミネラル分は人間にも必要な「五大栄養素」のうちの一つです。
ミネラル分を与えることで大粒でたくさんの米が収穫できます。
ミネラルは種類もたくさんあるため、多くのミネラル分を与えられるような肥料を選んでいます。
あま味、香りが増す有機肥料
有機肥料では主にボカシ肥料といわれるものを使用しています。
ボカシ肥料の主な材料は以下を混ぜて発酵させ使用します。
食べても大丈夫そうな、いい匂いがします。
- 米糠
- 大豆
- 魚介系肥料
- 糖蜜
これを施肥することで、お米の「あま味」「香り」が増します。
秋:稲刈り〜精米
今までの工程を終え、いよいよ収穫の秋を迎えます。
米農家が一番忙しくなるのがこの時期かもしれません。
秋に行う作業は主に以下となります。
- 稲刈り
- 乾燥
- 精米
稲刈り
稲刈りの工程は単純作業の連続です。
「雪国峠米」では以下の機械で作業を行なっています。
- コンバイン:刈り取り、脱穀(茎から実を外す)、藁の裁断を同時にこなす機械
- バインダー;刈り取りと結束を同時にこなす機械
バインダーは「ハザかけ」(乾燥の工程で詳しく解説します)を行う際に使用しています。
乾燥
収穫したばかりの稲は水分量が多く、そのまま精米してしまうと、直ぐにカビてしまいます。
なので、稲刈り後、乾燥の工程を挟む必要があります。
「雪国峠米」では二つの乾燥方法で工程には主に二つの乾燥方法をとっています。
- 機械乾燥
- 自然乾燥(ハザかけ)
一般に流通しているお米は、常温での長期保存が基本となるため水分量が低めに設定されています。
(※ カビなどの発生を抑えるため)
ですが、お米は水分量が多い方が美味しいです。
水分量が多いとあま味、粘りが増します。
「雪国峠米」では最も美味しくお召し上がりいただけるように、少し多めに水分量を設定し乾燥させています。
機械乾燥
コンバインで刈ったお米は、機械乾燥で乾燥させます。
乾燥させる際も、できるだけ時間をかけて低温で乾燥させるように心がけています。
お米は熱を加えると食味が落ちます。
自然乾燥
自然乾燥では、文字通り日光と風で乾燥させます。
自然乾燥と機械乾燥では、まず乾燥にかかる時間が大きく異なります。
- 機械乾燥:6〜9時間ほど
- 自然乾燥:7日〜10日
太陽の光を浴びて、ゆっくりじっくりと乾燥させることで、味、食感が格段に良くなります。
また、逆さに吊るすことで、藁の部分の栄養がお米に届き、お米本来の味に上乗せされるという効果があります。
この自然乾燥は地域により、様々な方法、呼び方があります。
私の住んでいる地域では以下のような方法で「ハザかけ」と呼ばれています。
ですが、通常の方法と比較して手間がかかるので、あまりたくさん生産ができません。
「早い者勝ち」です。
精米
精米とは、玄米からお米にする工程です。
この状態にしてようやく食べることができるようになります。
お米は鮮度が命。
精米した瞬間から鮮度がドンドン落ちていきます。
スーパーで見かけるお米は、精米からどれだけの日数が経っているのでしょうか?
「雪国峠米」ではご注文いただいてから、精米を行なっているため、できるだけ新鮮な状態でお届けします。
「源四郎のお米」は雪室保存
「源四郎のお米」は雪室という施設で保管しています。
雪室とは、雪国から昔から受け継がれている天然の冷蔵庫です。
冬の間積もった雪を、倉庫に入れることで、庫内の温度を一定に保ちます。
すると、お米の鮮度を落とすことなく、更に熟成されるという効果も見込まれています。
電気の冷蔵庫とは異なる「雪」の力
電気の冷蔵庫では、設定温度を「0℃」としていても、常に一定というわけではありません。
一旦-2〜3℃まで冷却し、一定温度に達してから、また冷却するというサイクルを繰り返しています。
これと比較して雪室では、天然の雪を利用しているので、常に「0℃」に保たれます。
「雪室」を保存に使用することで、年中新米と同様の味がお楽しみいただけます。
過酷な環境だからこそ生まれた、雪国の知恵です。
最後にひと言
お米作りは、環境に生かされています。
雄大な自然と昔から受け継がれてきた農地があるからこそ、美味しいお米が作れるのだと日々実感しています。
私のできることは、ほんの一握りです。
皆様に少しでも美味しいお米を食べてもらえるよう、日々試行錯誤を続けています。
どうぞ「雪国峠米」をよろしくお願いします。