お米の中に混ざっている、気になる「黒い点」や「黒い粒」。 先に結論からお伝えすると、そのほとんどは人体に無害であり、食べても問題ありません。
しかし、中にはごく稀に「食べてはいけない危険な黒(カビ)」や、「歯を痛める硬い種」も紛れています。
「どれが安全で、どれが危険なの?」
その違いは、実はちょっとした特徴を知っていれば誰でも簡単に見分けることができます。 現役の米農家が教える「黒いお米の正体」と「ちょっとした工夫でできる取り除き方」をマスターして、安心してお米を味わってください。
お米に混ざる「黒いもの」の正体とは?
お米を研いでいる最中、真っ白なお米の中に「ポツン」と黒い粒を見つけたとき。「うわっ、これ何?虫?ゴミ?」と、ギョッとして手が止まってしまいますよね。
私たち米農家が、普段どんな目線でこの「黒いもの」を見ているのか。そして、「これだけは食べてはいけない!」という危険なものとの見分け方を、種類ごとに解説します。
犯人はなんと9割これ!「カメムシの食事跡(斑点米)」

お米に入っている黒い粒、その正体のほとんどが「斑点米(はんてんまい)」と呼ばれるものです。
- 見た目の特徴: お米の表面に、ポツンと黒や茶色の「シミ」がついている。
- 食べられる?: 問題なし!(味も食感も変わりません)
【 農家のこばなし】
「なんで虫がついたお米が入ってるの!?」と思われるかもしれません。実はこれ、夏の間にカメムシがお米の甘い汁を吸った跡なんです。
私たち農家もあまりに量が多いときは「色彩選別機」という機械を使って弾いているのですが、100%取り除くのが難しいのが現状です…。 機械の目をすり抜けてしまうほど、カメムシもお米が好きだったということ。言わば「自然の中で育った証」でもあります。人体には無害ですので、見つけたら取り除いてあげるか、そのまま炊いてしまっても大丈夫です。
お米になりすます忍者「クサネム(雑草の種)」

次に多いのが、全体が真っ黒で、ゴツゴツした塊。これは「クサネム」という雑草の種です。
- 見た目の特徴: お米と同じくらいの大きさ。真っ黒で、石のように硬い。
- 食べられる?: 毒ではないですが、食べないで!
【 農家のこばなし】
こいつは厄介者です。大きさも重さもお米にそっくりなので、機械での選別が非常に難しい!
毒性はありませんが、とにかく硬いのが特徴。「ガリッ!」と噛んでしまうと、せっかくの美味しいご飯タイムが台無しになるだけでなく、歯を痛める原因にもなります。 研いでいる時に「なんか一粒だけ真っ黒でゴツイものがあるな」と思ったら、それは十中八九こいつです。迷わず退場願いましょう。
忘れた頃にやってくる「小石」

- 見た目の特徴: グレーや茶色。水に入れるとすぐに沈む。
- 食べられる?: 食べられません(歯が欠けます)。
【農家のこばなし】
最近は精米技術が進化してほとんど見なくなりましたが、稀に稲刈りの勢いで巻き込まれた小石が混入することがあります。
こいつの厄介なところは、お米より重いので「研ぐときに底に沈んで隠れる」こと。もし炊き上がったご飯の中に潜んでいた場合、歯の天敵となります。ただ、現代の精米済みのお米では石抜き機能が発達しているので、たまにしか出会わないレアキャラです。
小石については、「家庭用精米器」を使う場合は少しだけ注意が必要です。 家庭用の機械には基本的に石抜き機能がないため、万が一玄米に小石が混じっていた場合、取り除けずにそのまま出てきてしまうからです。
「それは心配…」と思われるかもしれませんが、それでも私は家庭用精米器を強くおすすめします! なぜなら、食べる直前に精米したお米の香りと甘みは、何にも変えがたい贅沢だからです。
▼ 家庭用精米器のメリット・デメリットや選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。

【重要】これだけはNG!危険な「黒カビ」
ここまでの3つは「間違って食べても(歯以外は)大丈夫」なものでした。しかし、これだけは絶対に食べてはいけません。
- 見た目の特徴:
- ポツンとした点ではなく、お米全体に黒ずみや灰色が広がっている。
- 手に粉がついたり、カビ臭いにおいがする。
- 食べられる?: 絶対ダメ!即廃棄!
【 農家のこばなし】
斑点米(カメムシ跡)との最大の違いは、「広がり方」と「におい」です。 斑点米が「ホクロ」なら、カビは「お米全体の顔色が悪い」状態。
カビの原因は、保存中の「湿気」です。もしこれを見つけたら、その一粒だけでなく、周りのお米にも菌が回っている可能性があります。「もったいない」と思わず、潔く処分してください。健康が第一です!
そもそもカビさせないためには、保存場所が大切です。冷蔵庫?常温?ベストな保存方法を以下の記事にまとめました。

黒い粒、やっぱり気になる!サクッと取り除くコツ

「食べても大丈夫と言われても、白いご飯に黒い点があるのはやっぱり見栄えが悪い…」 その気持ち、よくわかります!お弁当に入れたときなどは特に気になりますよね。
そんな時は、無理に我慢せず取り除いてしまいましょう。米農家も実践している、一番効率の良い「選別タイミング」をご紹介します。
「研ぐとき」が一番のチャンス!
わざわざお米をテーブルに広げて探す必要はありません。一番効率が良いのは「お米を研ぐ(洗う)とき」です。
- 水を入れた瞬間: 軽い「植物の種(クサネムなど)」や「中身のないお米」は、水を入れるとプカ〜っと浮いてくることが多いです。最初の水はサッと捨てつつ、浮いてきたものも一緒に流してしまいましょう。
- 指先への違和感: 研いでいる最中に、指先に「ゴリッ」とした硬い感触があったら、それは「石」や「重いクサネム」の可能性大。すぐにストップして取り除いてください。
▼ 黒い粒を取り除いたら、あとは美味しく炊くだけ! 「新米だと水は少なめ?」「3合だと何ml?」と迷ったことはありませんか?品種や量に合わせて、最適な水加減を秒で計算できるツールを作りました。
炊飯器に入れる前の「最終チェック」
お水を計量して、炊飯器のスイッチを押す直前。水に浸かったお米は白さが際立つので、斑点米などの黒いものが一番見つけやすくなります。
ここで目についたものをサッと箸や指でつまみ出せばOK。「完璧に取り除こう!」と意気込まず、「目があったら捨てる」くらいの気楽さで大丈夫です。
まとめ:黒い一粒は「自然の中で育った」証拠です
ここまで、お米に混ざる「黒いもの」の正体について解説してきました。
工場で作られる製品とは違い、お米は、暑い日も嵐の日も、空の下で生き物たちと一緒に育ってきました。
- 9割の黒い粒(斑点米)は、無害であり、農薬をできるだけ少なくして虫と共存した結果でもあります。
- 唯一、カビだけは健康のために避けてください。
黒い粒が少し混ざっているお米には、そこに至るまでの「米づくり」のドラマがあります。 もし黒い粒を見つけたら、ポイッと取り除いて、あまり気にせずにお米そのものの美味しさを楽しんでいただけると嬉しいです!







コメント